設計士にものを頼む、というのは、どうやってするものなのか、皆さん疑問に思っていらっしゃるかと思います。
基本的には、建築業界ではこんな風なカテゴリー分けをしています。ぜひご参考になってください。
@有名建築家 系…
安藤忠雄さんや伊東豊雄さんをはじめとして、建築学会賞などを受賞された事務所です。建築業界でも皆が憧れる建築業界の重鎮です。「大先生」のもとにお弟子さんが集まっており、公共建築も多く手掛け、その事務所にいたこと自体がプライオリティになる事務所。
住宅となると…お知り合いに口をきいてもらったり何かのご縁があるなど、ある程度の関係がないとお願いするのは難しいかと思います。
Aアトリエ 系…
アバンギャルド(見たことのない個性的)なスタイルをとる建築設計事務所。所員は大体、お弟子さん。
工事は別のゼネコンや工務店が行います。事務所によっては、変わった手法をとりすぎて、この施工会社にしかできない、という関係もありますので、設計と工事はセットで行われることも多いです。
B大中規模 建築事務所(公共系)…
公共施設やマンションなどの設計を行います。大きな建築会社(ゼネコン)の設計部門的な役割を持ちます。
住宅などちまちましたリクエストに応えておられん!もっと一発の営業で安定した仕事をとりたい!という考えなので、住宅設計の場合は、建造費が1億円以上のものを受けることが多いです。
施工は別会社が行います。
C小中規模 建築事務所(自社請け&下請け系)…
自分で仕事を受けながら、同時に他の建築会社の詳細図面を描く下請け業もしています。おもにハウスメーカーやパワービルダー(低価格住宅会社)などの住宅・店舗・マンション設計を行います。下請けの場合は当たり障りのない図面を引きます。
施工は、ゼネコンやハウスメーカーが指定する工務店など。
D工務店
施工をする会社。施工をするために設計をします。世代交代で息子さんや娘さんが建築士の資格を持ち、施工から設計までを手掛けます。世襲で長く続いている会社が多いです。
施工の腕は抜群なので安心ですが、素直でまじめな(雨の降らない)仕上がりを重視するので、オシャレポイントの理解は少ない傾向があります。
Eハウスメーカー
積水ハウス、住友林業、ダイワハウス、パナホーム、ミサワホーム、エス・バイ・エル、一条工務店、など、機能やデザインを自社の規格として厳密に決めて建てる総合会社。一軒一軒の仕上がりのばらつきが少なく、安心。
設計は、本社に数人、あとは外注先の中小設計事務所が行います。(ルールが細かいので誰がやってもぶれが少ない。)
施工は、契約工務店を何件も持ちそこに外注します。
外注が多いように見えるが、本社社員が管理をしっかりすることでトラブルを予防しています。
Fパワービルダー
一建設、秀光ビルド、タマホーム、アイフルホームなど。
会社の体制としてはハウスメーカーと同じ構造です。
が、圧倒的に価格が安いのが特徴です。
価格が安いからと言って、職人の手が悪いかというと、そうでないときもあり、会社や担当によります。悪い職人が多い会社は、数年で廃業しているのでその時点で判断ができます。
G建売(たてうり)系…(分譲住宅など)
ここは、厳密には、建築業界ではないと私は思いますが一応書きます。
不動産を生業とする会社が、自社の不動産に家をセットにして売っているスタイル。
建築というより、不動産販売が目的なので、会社自体がそもそもどのレベルの建築意識というと「目立ってよく売れる」か「値段の割によさそうに見える」か「クレームが来なければよい」と思っている程度。私たちがトラブルに駆けつけることも多いのですが、壁の中や屋根裏など見えないところがいっぱい端折ってあります。
ただし、キッチンなどの機器は安心のメーカーを使っています。そのかわり、目を引かない設備(給湯器など)は大概マイナーメーカーです。
予算がどうしても出ない場合は、非常にいいのでおすすめですが、長期的にはメンテナンスの必要が多いということは申し上げておきます。
H住宅系設計事務所…
クーカンはこのゾーンかと思います。
「自分が設計し、自分が施工する」事務所。
ご夫婦でやっていらっしゃるとか、友人同士、ということが多く、人間関係重視なので、その設計士の人柄次第というところがあります。オーナー自体が設計や施工のシステム化は苦手なので、標準値がわかりにくく、一般に敷居が高いと思われるゾーンです。(うちは低いと思うのですが…)
施工は別会社が行うのですが、ほとんど同じ会社を使うところはアトリエ系に似ています。
長く書きすぎましたね!最後のクーカンまでたどり着けた方はいったい何人いらっしゃるのでしょうか。
しかしながら申し上げたいのは、食料品にもスーパーから駄菓子屋まであるように、住宅業界にもいろいろなカテゴリーがあるということです。
ある程度のご知識とともに、新居のご計画を進めていかれることをお勧めします。