今日から新しい工事現場です。
弊社は、年間120件のリノベーションを女性社員と職人さん達でこなしています。
今日は小さな監督さんが、保育園が休みだったため1日張り切って参加してくれました。
その夜帰ってきてテレビをつけたら、「スピード感を持って対応しました」と政治家が言っていて、この言葉よく聞くなぁと思うので、ちょっと書きます。
私は、トップが「スピード感」を重視しすぎる会社って、嫌いです。
なぜなら、社員という資源を消費しているだけで、労わっている感じがしないからです。
特に子供を産んで育てている場合や、家族の介護に奔走している人の場合、職場でスピード感なんて持ちようがない人が多いです。
家族を育てていない、面倒を見ていない人たちだけが、自分の思うように時間を使えるので、「返事はすぐしろ」「決めたら納期を守れ」「すぐに報告連絡相談しろ」といえます。社員さんが家に帰ってまで仕事を持っているなんて気づいていません。
しかし6歳以下の子供を持つ女性の平均家事育児労働時間は7,5時間。子供が大人の面倒を見ているのヤングケアラーも増え続けている中、自分の仕事だけに集中できる人は、いったい何人いるんでしょう。
また、コロナの影響で、部品がないだの材料がないだの、そんなことも増えましたが、馬耳東風。
ホントなら、ないなら待ったらいいんじゃないの、といえるのも良い人生です。
職場では凄いスピードで働いても、私は家で、3人の子の面倒を見ていました。当時は、自分の時間が欲しくて仕方がなくて大変苦しんでいました。
でも、10年ぐらい経つとわかってきたんです。
「相手を待つ」行為の深みと歓びが。

今日、この小さな現場監督さんは、職人さん達の作業を面白がってずっと見学し、ときには打ち合わせに加わり、最後には私の真似をしてほうきを持って現場を掃除し始めました。
「おじさんたちのこと怖くないの?」
「かっこいい〜」
「音うるさいでしょ」
「強そう」
と言うこの監督は、解体で出たゴミを、おぼつかない手つきでほうきで掃いて、しまいには上手に集めて、何度も何度もごみばこに行って、キレイに捨ててくれました。
おじいちゃんもお父さんも、「現場」に行く人なので、多分この子もその血が流れています。本当に楽しそうでした。連綿とした家族のつながりを感じて、嬉しくなりました。
私たちは可愛くて仕方がなくて一日仕事をしました。
会社をうまくやっていくには、また、お客様に選ばれる仕事をするには、「スピード感ある回答」「スピード感ある決断」は必要だと思います。
しかし、作業自体や、普段の行動の一つ一つを毎日毎日「スピード」で押し通そうとすると、社員さんは多分疲弊してしまいます。
何もできない子ができるようになっていくさま。その絶妙にじわじわとした時間は、スピードとはえ縁遠い。しかしその子の心がゆっくり花開いていくのは幸せなものです。
だから、「スピード」が肝心だなんて、なんだか小手先の理屈な気がしてしまうんです。
そう、仕事をする喜びなんて、誰かが昨日よりうまくなったとか、あの人が今日は幸せに生きている、ということに尽きると思っています。自分のなにかの力が世の中に善い作用をするのが楽しいのです。そしてそこには、深くゆっくりした時間が必要です。
私たちが、基本的に女性ばかり雇いたがるのはそんな理由もあります。もし家族を持ったら、全くスピードが出せなくなる女性の立場。
しかしそこにしみじみとした、力強い「永遠へのカギ」を感じるのです。
彼女達はたいがい「自分の子どもの面倒をなぜみたくないの?」と私に訊きます。
私は毎回「時間がもったいないから」と言っていました。我ながら自己中心的すぎて、いまは恥ずかしく思います。
女性活躍が大切だと思っていることの1つに、こんな、限りある自分の時間を喜んで新しい存在に差し出せる感覚を持ってる女性への、敬意があります。(私はどうも少ないですけど)女性の感性、これからも会社経営に活かしていきたいと思います。
posted by Kuhcan at 22:16|
工事写真