2023年07月25日

家の声

 「あなたの仕事は、家の声を聞いてそれをカタチにする。良い仕事だよね」とある方に言われました。
 シブい人だと思いました。私が「お客様の声」でなく「家の声」を聴いている、と言われたからです。
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 もうすぐ雨漏りを直す大工がいなくなると私は思っていて、クーカンではその育成のために、丁寧に家を治します。
 直せば直すほど、新しく家を建てると言う意味がよくわからなくなってきて、実はブログが全然書けませんでした。
。。。
 
 丁寧に家を見ると、丁寧に家を建てても、長期的には多分違うなと、思うことが増えてきてしまっていました。
 人間の要望と、自然と共生する家は、相反するな、と気づいたからです。
 「お宅は雨漏りが心配ですよ、うちで工事をしましょう」と20〜200円円の見積もりを持ってくる会社はみんな悪徳業者だと先日書きました。
 本来なら「家を持つ」って一生の財産をかけた大仕事ですが、皆さん家を建てるきっかけが
・一軒家を構えるような年頃になった
・お金が貯まった
・お金がないけど、借りれることになった
が大半なんですよね。
私は、最近、こういう仕事は若いスタッフに任せています。その方が、アイディアがフレッシュだし、お客さんの意見を聴き、建てるからです。
 私の本音を言うと、「施主の夢や希望の100点を目指すと良い家はできん」と思うことが増えてきました。そこで、「80点でやめましょう。」を若いスタッフの影から全力で言うという仕事をしています。
 
 完璧な家を作ると、メンテナンスがものすごく大変になるためです。
 その場合、その家は将来なにに困ることになるか?、そのどこに一番目のメスを入れなければいけないのかを、ホームドクターとして考えています。
 最近家も高くなったので、皆さんは「一生の買い物」と思っていますが、本当は20年を過ぎれば何度でも手を入れたり修復したりは必要です。日本の四季や湿度、天候が荒いからです。
 80%で止めておくと、20年後のメンテナンスが楽です。つまり安くつきます。それでも、60年目になると壊したくなるかなぁと言う気がします。
 私が古民家が好きなのは、130年目でも壊さずに直たくなる情緒があるからです。今の新築は、100年経ったら情緒は一切なくなると思います。
 だからきっと、建てた本人がいなくなれば壊されてしまいます。それってゴミなるんだなぁと、60〜100年でゴミになる家は嫌だなぁと、100年後思ってくよくよしています。
 
 そんなわけで、新築こそ全力で建てています。
 最近、新築用であるこのブログが書けないのは100年後のクーカンの家の矛盾に気づいてしまったからです。kuhcanの家は頑丈で嬉しいと言われれば言われるほど、次世代の方のメンテナンス費を思って、心配になっています。
 だから冒頭の「家の声を聞いているね」はうれしいご指摘でした。
 別のお客様から「ウチの家はどこが1番辛そうしていますか」と、築60年の調査を依頼されました。ご自分ではわからなくても、何か辛そうだな、ということは感じていらっしゃる。これからはこういう仕事をしていきたいと思います。家の声を聴く仕事。
 家づくりは、実はこの感性が本当に大切です。
日本の家は、木や土や竹という植物でできているので、呼吸をします。この呼吸が、セメントや金属の板などで塞がれて、呼吸ができなくなっている。(または、その中で木が腐っていく。)
 ここに異常性がありますが、現代風の家は、たとえ私どもの建築であっても、セメント板や金属板で覆うことが多いのです。
 これは、はっきりした理由があって
「木、土、竹で作ると、時間が経つと乾燥して隙間ができ、家と外がつながってしまう」クレームを避けるためです。
 
 つまり、蚊やゴキブリ、強い吹き降りの雨やネズミの侵入を塞ぐために、家の声が聴きづらい建て方をするのです。
 最近、古民家を触れば触るほど、「隙間はあってもいいなー」と思うようになりました。
 そして、断熱のことをとやかく言っていますが、紙一枚(障子)だけで締め切った部屋が、夏なのに涼しいことにも驚かされます。
 2023年7月の今は、古民家リノベーションも、新築も2軒ずつ工事中です。どちらもご見学可能ですので、ぴっちり頑丈な新築と、築130年の古民家、比べて見たい方はぜひ、弊社までお声掛けください。
 
 
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posted by Kuhcan at 02:11| 古民家再生協会