2023年06月10日

雨漏りが治らない時代

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古民家や空き家のインスペクションをしていて、「なんだこれは」と思わずうなるひどい施工の家があります。
安普請(やすぶしん)という言葉がありますが、全くもってそれで、特に高度成長期の60〜40年前のが最悪です。
 70年〜100年のほうが、大工さんがALL手刻みで、天然の木を使って建てているので、断然頑丈です。しかも壁は土なので、濡れても乾くため、柱や梁も頑丈です。
 築50年の家の方が、壁にモルタル(コンクリートのようなもの)を塗り、木も細く、壁の中で、湿気が溜まって、柱や梁が腐っています。外から見て不具合がよくわからないので、放置したので中が腐っています。
ちなみに古い家の場合、地震で揺れれば、柱と土壁の間に隙間ができ、家の中からうっすら光が差し込んで見えるし、隙間風が気になったりするので、不具合にすぐ気づくことができます。
 しかも、柱は室内外に見えているためしゃんと乾くせいで、屋根や基礎さえ悪くなければ、躯体は頑丈なままです。
 つまり古民家はとてもサスティナブルです。
 最近、知り合いの建築屋さんが、「自社で工事していない雨漏りは、なおしに行かないことにした」と言っておられました。
 これはどういうことかと言うと、一旦雨が漏ってから放置してある家は、ありとあらゆる場所を直さないと、どこかが腐ったり、溶けたりしていて、工事費が高額になり、初めて会ったお客様から不信感を抱かれるからです。「ぼったくりじゃないか」と思われて会社のイメージが悪くなるから、工事をしたくないと言うわけです。
 その点、「20万円〜80万円で屋根を直しますよ。」「200万円位で壁を塗り直しますよ」と言うプチリフォームの雨漏り修理の業者が続出しています。
 プロ視点で言うと、前者は安すぎ、後者は高すぎます。
 大体40坪位の家の屋根瓦を、40年ぶりに治した場合、屋根は500万円ほどかかります。
 外壁塗装は、160万円で、そこそこ高品質な塗料で濡れます。
 しかし、プチリフォーム業者は、屋根の直すべき部分をほとんど直さず、痩せた土葺きも放置して、お客さんの気分のいい値段に収めます。
 外壁塗装では、止まるはずのない屋根の雨漏りを塗装で直そうとし、さらに安い塗料を使って5年後には酸性雨で表面が溶けて白化してしまうような、安い塗料を高い値段で塗ります。
 「お客様が出しやすい値段」で、必ずしも家が治るわけではありません。
 40年目のメンテナンスで、屋根が100万円以下で治る事はありません。それは単なる応急処置です。
 
 こうしたことを堂々と言える会社は減ってしまったなと思っています。工務店がどんどん倒産しているので、大工も資格もない、新参のなんちゃってリフォーム業者が世に溢れています。(古参のが居ないのは、定期的に潰れていくから)
 最近では「エコキュートが壊れているから直しますよ」と言う謎のセールスが増えました。昔は「エコキュート80万円ほどで取り替えますよ」でしたが、世の中にお金がなくなったのか、「なおす」程度の30数万円で騙しに来ます。
 (エコキュートは、製造メーカーに直接言えば、せいぜい数万円から100,000円位で直してもらえるので、変な業者を入れないようにお願いします。)
 そんなわけで、金稼ぎのリフォーム業者が増え、本当に家に向き合う会社が潰れていく昨今です。ハウスメーカーの長期優良住宅の囲い込み営業の方がまだマシで、値段が割高とは言え、こちらは悪くなる前にオーバースペックで治してもらえるので、家はちゃん治りメンテが行き届きます。
 
 長々と書きましたが、100万円で50年放置した家は治りません。
 この言葉を商売的とかぼったくりとか思われない、本当に家の為を考えている総合的な工務店として、正しくやっていかないとなと思う次第です。以下は、弊社が本気で直した、90年の屋根の動画です。
 
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posted by Kuhcan at 06:11| インテリアレッスン