
今まだ内部の解体が終わっていないリノベーションの現場。
ひょっとして家族にご不幸があるかもしれない、畳だけでも入れられませんか?とのお電話を朝いただきました。
まだ先だと思っていた仕上げ工事が急に必要になったので、慌ててその部分だけ緊急で職人さんにいろいろ要求をしています。
大工の岡部くんは、「わかった、じゃあ今日の作業を中断してそちらを先にやりますね」と言ってその日のうちに16畳分の敷居と鴨居を造作してくれました。
ところが数人の材料屋さんが「急に言われても… 」のお返事。
大きなシステムで動いている会社ならいざ知らず、わずか数人が働いているだけの企業の人が、人の生き死にに敬意を払ってくださらない態度に、世も末だなと感じてしまいました。
「こちらだって無理なのは承知です」。大事な方が1人戦っていらっしゃり、ご家族が心を痛めていらっしゃる時に、なぜその家のため万障繰り合わせて動けないのか、この人は人間として大事なものを置いてきているんじゃないかと腹が立ってしまいました。
でも5分も経てば「わかりました何とかします」との電話。
これが恒常性バイアスと働き方改革の弊害です。人間として大事なことを置いてくる。今がどんな時で、自分の事は後回しにすべきだということがとっさに判断できない。「えッ!それは大変ですね」と胸を痛めることないことが1番の衝撃でした。たとえ知らない人であろうが、自分の今日1晩のくつろぎよりも、どなたかの人生最後の時の方が大切だと、普通に感じて欲しい。
自分で会社を経営していると、花びらのお湯につかっているような環境になると、つまり心から楽しんで遊んでいると、「私がこんなに油断をしている間に会社は大丈夫だろうか」と言う気持ちが定期的に訪れます。いつでも何かを心配しています。
ですからむしろ空間のメンバーはこんな時「よっしゃやるか」とすぐスイッチが入ります。こういう時は、みんな滅私です。
でも、異変があると、パニックしたり、今までの作業をそのまま続けようとしたりする方がありますね。これはいつも平和で、自分のことしか考えてない人です。そっちを優先して他の仕事で怒られたら困るとか、自分の計画が狂うのが辛いとか思っています。
「ではそのもう一つの現場が遅れるなら私が謝りに行きます。それにその現場はわたしの担当で、数日遅れても支障はありません。こちらを優先してください。」と言ってようやく動いてもらえました。
毎日顔を合わせる社内スタッフには全員改めて、こんなときの優先順位の付け方を周知させていただきました。
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